出会ったのは日本刀をかざす細い腕、桜を散らす太刀筋、まっすぐ獲物を見据える瞳、


「なかなかやるじゃねぇかぁ」
「それはどうもありがとう」





「カス、任務だ」


ヴァリアー幹部による定例会議が終わってすぐ、ボスに書類を投げつけられた。一枚、二枚、三枚…結構な量だ、そのほとんどが顔写真が載せられた個人データのようなもので、こいつらを消せばいいのだと悟った俺は、


「こんなもんすぐに終わらせてくるぜぇ」

そう言い残して部屋を出たその足で、日本に向かった。日本に滞在中のあるファミリーを殲滅するのが今回の任務だった。


飛行機の中で睡眠をとった俺は、日本に着くとすぐに資料に書かれたファミリーの別荘に向かう。先に日本に到着していた部下が、すでに車などは手配し、いつもながら任務の下準備は完璧だ



車に揺られて数時間、やがて整備された山道を抜け、山中に似合わぬ豪華な屋敷が見えた


「スクアーロ様、到着致しました」
「正面から突っ込む、ついてこい」


車から降りて堂々と正面の門に向かう、


「おい、貴様、このファミリーの者じゃないな。何をしにきた?」
「ヴァリアーだ」
「な、ヴァリアーがなぜここに、っ」
「通らせてもらうぜぇ」


刀を抜いて正面突破、門前警備を倒すと屋敷中に警報音が鳴り響く。途端に俺を排除しようとたくさんの輩が屋敷から出てくるが、どいつもこいつもたいしたことない雑魚ばかりだ、行く手を阻むものだけをあしらってその他は部下にまかせ、一番のターゲットであるこのファミリーのボスをさがす、が、(まったく無駄に広い屋敷だぜぇ、)なかなか見つからない。こんなファミリーでも建物だけは立派で、室数はごまんとあるようだ、自分で探すのはあきらめて、その辺に転がる下っ端らしき男を捕まえ問う


「う゛お゛ぉい、てめぇらのボスはどこだぁ?」
「さ、桜のある部屋にっ」
「桜だぁ?」


クックッと喉を鳴らして、てめぇらのボスはいい趣味してやがる、と嘲笑えば、男の怯えた俺を見て瞳が揺れる、「たすけてくれ」口がそう動いたが、うざかったので廊下の端に殴り飛ばした。(この俺に情けなんてものはない、)


しばらく奥へ進むと桜の花びらが落ちている、辿れば大きなドアを見つけた。ここか、呟いて、それを蹴り開けて部屋を見渡すと女がひとり、


「…ボスはどこだぁ?」
「いないわよ、とっくに逃げたもの。遅かったわね」


女はクスクス笑いながら言う。ヴァリアーを挑発するとはいい度胸だ、


「なら、さっさと貴様を倒して追うまでだなぁ」
「あはは、やってみれば?スクアーロ」


貴様なんで俺の名を、言おうと口を開く前に、女が床を蹴った、ので俺も剣を構える。一瞬、すぐに鉄の高い音が響いた、刀と剣が合わさる、 そして見えた彼女の日本刀をかざす細い腕、桜を散らす太刀筋、まっすぐ獲物を見据える瞳、



「久しぶり、だね」
「なんでこんなところに、」
「待ってた、って言ったらどうする?」


彼女が剣をもう一振り、俺の髪を掠めた


「…なかなかやるじゃねぇかぁ」
「それはどうもありがとう」


笑って、の手首を峰で打てば、彼女は光る日本刀をいともたやすく床に落とした


「後悔してるんだ」
「…………」
「あの時、逃げちゃったこと」
「あの時?」
「Aちゃんに告白されてたでしょ、放課後の教室で」
「…ああ、」
「4年経っても未だに忘れられなくて」


未練たらしい女だって幻滅する?、言いながらは苦笑いする


「盗み見なんて趣味悪いぜぇ」
「次の日仮病使って休んで、…そのままあたし転校しちゃって」
、」


「あなたを追って、マフィアになったの」


俺を求める瞳に、剣を床に投げ捨てて、桜色のくちびるに口づけた




076 打ちのめす君の言葉
( 刀で貫くは愛、 そして散る桜 )




「ついでに、あいつの告白はちゃんと断ったんだぜぇ」
「え、そうなの?」
「あと、」
「なに、」


「俺もお前が好きだ」



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20070830 お題 // by hazy