「好きです」 放課後、夕焼けの赤は校舎のいたるところを染めた。教室に明日までに提出のまだ少しも手をつけていない宿題を忘れて、駆け足で教室まで来て、息を切らしながら見た光景は、びっくり、クラスで一番かわいいといわれているAちゃん(仮)、なんてせりふを口にしちゃっているのかしら!彼女の赤い顔はきっと夕焼けのせいなんかじゃない、あんなかわいいコに告白なんてされちゃっている幸せなボーイはいったい誰なのか、これはこっそり覗いちゃうしかない、と思って、あたしはがんばって覗こうとした。が、しかし、 「俺がかぁ?」 覗く前に声が聞こえた。あらこの声は、隣の席のSくん(仮)のものに違いなかった、そう、彼はあたしの好きな、ひと 「うん」 「………」 Sくん、黙っちゃったみたいです、そしてあたしも動けない。なにこれ時間が止まってる、 「返事は、急がないし、…ごめんね突然」 「…おう」 Sくん、まんざらでもないみたいだね、声色からすればきっと照れているんだ。 なんちゃって、馬鹿みたいあたし、明日どんな顔して会えばいいんだろう、いやいやそんなことじゃなくて、なんか、違う、そんなことじゃないのに。思考回路が正常に動作しないのはぜんぶ、この真っ赤な風景のせいなんだから! 「聞いてくれてありがとう、私行くね」 あ、やばい、もう行かなきゃ(宿題はもう諦めよう、)Aちゃんが一歩踏み出す音が聞こえる、あたしは、なぜかものすごく名残惜しいこのシチュエーションから抜け出す廊下を早足で進んだ(手遅れになる、気がしてならなかったんだ) |
次の日、手を繋いで歩いているAちゃんとSくんを見て、あたしは泣くのかな、
(窓を閉じる) |